社外取締役鼎談

社外取締役が見る保土谷化学の転換点

保土谷化学グループは、中期経営計画「コード2030」の実現に向け、持続的な企業価値向上を支えるガバナンスの強化に取り組んでいます。
この観点から、重要な役割を果たす社外取締役が、当社のガバナンス体制への評価や経営課題への提言、今後の成長に向けたリスク認識、そしてステークホルダーへのメッセージについて、それぞれの視点からお話しします。

保土谷化学グループのガバナンス体制、ガバナンス強化に関する評価をお聞かせください。

坂井ガバナンスの基本は、内部統制の徹底と内部監査の充実にあります。当社の内部統制では、品質不正の防止から情報セキュリティまで幅広い分野でのコンプライアンス研修を実施し、研修効果を常に測定するとともに、受講者からのフィードバックに基づいて研修内容の充実を図っています。内部監査では、各種法令や社内ルールの遵守を徹底することにとどまらず、生産性や労働環境の向上を図るための業務改善策を具体的な実施手順を示して積極的に提案しています。内部統制と内部監査を基軸とした守りのガバナンスに万全を期すとともに、今後は、適切なレベルのリスクを取って新分野に挑戦する攻めのガバナンスを強化していく必要があると考えています。

藤野私は社外取締役を務める会社は2社目なのですが、保土谷化学グループのガバナンス体制は非常にきっちりしている面と柔軟な部分の両面があると感じています。取締役会の冒頭で適法に成立していることを必ず議長が宣言するといった一定の形式が守られている一方で、一部の守秘の案件以外では取締役会に取締役以外の執行役員も陪席するなど、取締役会での議論が開かれていて、最初は少し違和感を感じたのですが、今はガバナンスの面からも、次世代の経営人材育成という観点でも、むしろ良いことなのではないかと思っています。

松永保土谷化学の監査等委員会、取締役会に参加し、毎回的確な資料が準備されたうえで、徹底的な議論がなされていることに感銘を受けました。全ての議案に様々な観点からの意見が出され、決議事項以外にも重要な課題については「報告事項」として意見交換が行われ、内容の軽重によっては複数回の議論を尽くし、議決に至っています。手続きに基づく統制についても重視されており、監査等委員会と内部監査部との間で意見交換会を設けているなど、様々な事案がなぜ生じたのか、業界慣行、企業風土などその真因を追究しようとしています。

保土谷化学グループの経営課題に対して、これまでどのようなアドバイスをされてきたのでしょうか?
あるいは、今後アドバイスするとすれば、どのような場面・分野が想定されるでしょうか?

坂井取締役会では、オープンイノベーションによって製品開発力、製造力を強化するとともに、販売力、特に海外における販売力を強化することを提言してきました。当社は、本年3月に欧州の有力なホスゲン誘導体製造販売会社であるFramochemの買収を決定しました。高度な製造技術を要し新規参入が困難なホスゲン誘導体の生産拠点を日欧の二か所に確保できたという成果に加え、Framochemのネットワークを通じて当社製品の欧州での販売を飛躍的に拡大させていくことを期待しています。

藤野保土谷化学だけではありませんが、製造業は圧倒的に男性社会ですし、保土谷化学も私が最初の女性の取締役です。もともと情報通信の世界でキャリアを積んできて、今は人材育成の仕事をメインにやっている者としては、まだまだ保土谷化学は女性の能力を活かし切れていないように感じており、女性の活躍について提言してきました。今後は製造業でも人手不足や新しい技術の導入などを背景に、女性やシニアをどう生かすかが、勝負になると思っています。

松永保土谷化学グループの経営課題に対し、経営陣の方々とは異なる視点、角度から問題提起できないかと考えています。近年、関税などの通商政策、イノベーション振興などの産業政策、経済安全保障政策など、政府の政策がビジネスに大きく影響するようになっており、法規制の動向、支援策の動向など、これまでの知見をもとに、できるだけ取締役会の場で紹介をしてきました。また私自身が自動車産業という、化学分野とは異なる業界に属していることから、経済環境やビジネス動向について、異なる見地からの情報提供を行い、経営陣に新たな「気づき」の機会を提供できないかと考えています。

「コード2030」で掲げる5年後の姿に向けて、現時点で最も大きなリスクは何であり、経営は何に取り組んでいく必要があるとお考えですか?

坂井今日の企業にとって最大のリスクは、リスクを取らない消極的な経営に甘んじることです。当社は、前中期経営計画をフェーズ2として継続するのではなく、新たな中期経営計画「コード2030」を策定してこれまでにない非連続的な戦略を展開することとしました。企業買収や積極的な新技術・設備への投資によって、本邦嚆矢の電解法苛性ソーダ製造を開始してから100年以上にわたって培ってきた基盤技術を大きく花開かせ、先端分野に積極的に攻め込んでいきます。

藤野「SPEED 25/30」の延長ではなく、新たに「コード2030」としてスタートするというのは、役員自ら「自分たちは変わらなければならない」という危機感の表れだと理解しています。メンバーシップ型にポスト給をプラスするハイブリッドなジョブ型人事を管理職に導入するなど、社員に対して変化を求めるのであれば、役員自ら失敗を恐れず挑戦する姿を見せて、確かに保土谷化学は変わっていくということを社員に感じとってもらえることが大事ではないでしょうか。

松永「コード2030」では、これまで保土谷化学グループが110年企業として営々と築いてきた事業基盤の上に、研究開発や設備投資、そしてM&Aも活用し、新事業に挑戦することで、中長期的な成長基盤を築くことを計画しています。その前提となる技術力、人材力、資金力などの潜在力には確信を持っており、また、有機EL、バイオ、半導体など、今後大きな需要が期待できます。ただし、課題は、開発と上市のタイミングではないかと考えています。市場動向に遅れないだけでなく、早すぎず、適切なタイミングで開発・上市できるか、まさに経営陣の手腕が問われていると思います。

社外取締役としてステークホルダーへ向けたメッセージをお願いいたします。

坂井ステークホルダーの中で、今回は特に投資家の皆様へメッセージを送りたいと思います。当社は、順調に成長を遂げてきた有機EL事業やスマートフォンなどのアルミ着色用染料事業に加えて、中期経営計画「コード2030」に基づく積極的な投資によって次世代医薬品である核酸医薬分野などの新分野に参入します。また、これまでの5期連続の増配に加え、DOE3%以上という目標を掲げて累進配当を行います。先日の株主総会では、買収への対応方針が承認され、当社の技術力を活かした安定的な経営を阻害するような、短期利益を目的とする一方的な買収が行われるリスクは低減しました。100年企業であり、これからの100年を目指して大きく成長する当社への積極的な投資を、投資家の皆様にお願いする次第です。

藤野保土谷化学は内部統制や内部監査の仕組みがきちんと整備され機能している会社です。コンプライアンスに関しても地道に研修を実施し社員への浸透を図る工夫がなされています。私は社長を始め役員の皆様の倫理観に不安を感じることなく社外取締役を務めることができています。その大事な土台を崩すことなく、次の「コード2030」の目標を達成することができるように背中を押し、その果実を株主の皆様や役職員を始め全てのステークホルダーと分かち合いたいと思います。

松永保土谷化学グループは1世紀を超える歴史を持つ企業として、その時々の人々に寄り添い、社会に必要とされる素材を提供してきました。そして近時は、これまでに培った強みをベースに、新たな成長分野への投資も加速化させています。「化学で夢のお手伝い」を実現する̶̶当社が掲げるPURPOSEの下、約1,000人の役職員がそれぞれの力を結集して取り組んでいます。ぜひこれからの保土谷化学グループの挑戦を、中長期的にご支援いただきたいと思います。