社外取締役メッセージ

加藤 周二
社外取締役(監査等委員)

通商産業省(現 経済産業省)の行政官や経営者として、通商産業行政や国際業務、企業経営に関する豊富な経験と幅広い知識を有する。当社において、指名・報酬委員会委員長を務める。

客観的な視点をもって次世代経営人材への
関わりを深めていきます

2013年に当社初の社外取締役に就任し10年余りになります。就任当初は業績も厳しく、現在当社の発展を支えている韓国のSFCの有機EL事業などもまだ揺籃期でした。当時は2015~20年度を計画期間とする前中期経営計画の“HONKI2020”の策定の最終段階でもありました。前計画ではすでに成熟期を迎えた基盤事業をしっかり守りながら、新しい事業の柱をどう育てていくかという議論が中心であったように思います。
現中期経営計画の「SPEED 25/30」も折り返し年度が近づいています。前中期計画でははっきり見えなかった新規事業の形や実績が見えてきて、これをさらに発展させていくと同時に、次世代を担う事業の柱を生み出していく必要性が強調されています。またサステナビリティへの取り組みも強化されました。保土谷化学単体の業績の改善という観点からは、既存の成熟事業をどう活性化するかも重要な課題です。
当社のガバナンス体制も、大きく進展しました。2015年に監査等委員会設置会社に移行し、2018年には常勤取締役4名、社外取締役3名の現体制となりました。2023年には藤野しのぶ氏が社外取締役に、2024年には津久井見樹氏が執行役員にそれぞれ就任されるなど、女性役員が増え、ダイバーシティも進展しました。
前後しますが、2019年には指名・報酬委員会が設置され私が初代の委員長に選任されました。役員、部門長の選任や報酬のあり方に社外の立場からの客観的な視点を加える重要な責任を感じています。会社の協力も得て、ほかの社外取締役と一緒に幹部の皆さんとの意見交換の機会を持ち、次世代経営人材選定の一翼を担っています。社外取締役就任以来10年余りで当社グループは、研究開発型のグローバル企業へと大きく変身してきました。
これからもこの流れを発展させていくことを期待しています。

坂井 眞樹
社外取締役(監査等委員)

長年にわたる農林水産省の行政官としての経験から、農林水産行政や国際業務に関する豊富で幅広い知識を有する。

人材の多様性が進む中、顔の見える関係づくりで
創造力に富んだ職場の実現を

厚生労働省の調査によれば、高校・大学の新卒就職者の3割強が3年以内に離職しています。新卒一括採用は、欧米には例を見ない日本独特の慣行で、終身雇用の下で社会経験のない学生に一生の就職先を選ばせることにはそもそも無理がありました。私が就職した1980年ごろには、法学部や経済学部の学生の間で銀行や損保が人気がありましたが、給与が良いというほかに、さまざまな業界に関与できるという、自らの関心や適性を見極めきれないことの裏返しの理由によるところが大きかったように思います。
新卒一括採用という合理性を欠いたシステムが崩壊していくのは必然で、これからの職場は、新卒採用の人、他社から来た人、自社をいったん退職して復帰したアルムナイ採用の人、また勤務期間についても、定年まで勤める人、一区切りがついたら他社へ移る人など、いろいろな面で多様な人材で構成されることになります。こうした多様性が増した職場で、新規顧客の開拓、新製品の開発や新規事業の立ち上げといった創造性の高い仕事をしていくためには、自由に自分の意見や提案を出し議論できる環境が必要です。
こういった理想的な職場に近づけるために、人と人との直接的な交流、その場を共有しお互いの顔を見ながら意見交換を行うこと、いわば顔の見える関係づくりを進めることが大切ではないでしょうか。手間はかかりますが、その後のメールやチャットというコミュニケーションツールによるやり取りもより中身の濃いものになるはずです。
当社では、本社移転に伴って社員が交流できるスペースを設置しました。また、社長をはじめとする役員が頻繁に海外を含む子会社や工場、研究所を訪れ、意見交換を行っています。こうした取り組みをさらに進め、年齢や役職、所属するセクションの垣根を越えて顔の見える関係を構築して創造力に富んだ職場を実現していきたいと考えています。

藤野 しのぶ
社外取締役(監査等委員)

事業会社での長年にわたる業務経験に加え、キャリアカウンセラー、社外取締役としての人材育成、組織開発、ダイバーシティ推進等の豊富な知識・経験を有する。

2030年に向けて、変化を起こし続けるための
中長期的な議論を行っていきます

取締役会の運営については、非常に工夫されています。事前に送られてくる資料はかなりの量ですが、前日に一部の議案については事前説明が行われ、当日は、ポイントを絞った説明がなされた上で、質疑応答の時間が十分にとれるように運営されています。取締役全員で7名というコンパクトな会議体なので、近い距離で話し合う雰囲気となり、質問や意見などをざっくばらんに口に出せる場になっています。中期経営計画「SPEED 25/30」の進捗状況についても定期的に報告がなされ、経営の現状把握や今後の見通しがタイムリーに行えるようになっています。この1年は、2025年度の目標に向けて短期的な視点での話題が多かったのですが、今後は2030年に向けての目標の再検討など、中長期的な話題が増えてくるものと期待しています。
「SPEED 25/30」のテーマの一つにダイバーシティの推進があります。人材の多様性がもたらすプラス面は、絶えず変化を求められる今後の企業運営に必須だと考えます。グループ内では、韓国の企業との交流で多様性の視点が得られるのも強みです。また、今年は社内から女性の執行役員が誕生しました。日本の大学も、ようやく女性の理系人材を増やす施策を始めていますが、保土谷化学でも女性の採用やリーダー層への登用などにさらに積極的に取り組み、組織の変化を地道に起こし続けてほしいと思っています。
変化という面では、DX推進による経営基盤の強化も、「SPEED 25/30」のテーマの一つです。取締役会では、基幹システムSAPの更改プロジェクトの進捗についても適宜報告を受けています。当初の計画通りの進捗とのことで、コストやリスクへの事前検討が十分になされた上で実施されていることがうかがえます。新システムではより正確で迅速なデータ収集/分析が経営に資することを期待しています。