社外取締役対談

社外取締役として
新しい視点を持ち込み、
議論の活発化に貢献する

社外取締役(監査等委員)
加藤 周二

社外取締役(監査等委員)
坂井 眞樹

保土谷化学グループのガバナンスの強化に関する評価をお聞かせください。

加藤私は2013年に保土谷化学の初代の社外取締役に就任しました。その後、社外取締役が増員され、監査等委員会設置会社になり、現在は社外取締役比率が42.9%になっています(P.51参照)。取締役会の在り方だけも、当社のガバナンスは着実に強化されてきたと思います。

坂井ステークホルダーの代表である社員を正しく育て、幸せにすることができるガバナンスが理想的だと考えています。そのために、不正を許さない意識や、紛らわしいことがあった場合に指摘できる心理的安全性を担保し、一人ひとりのコンプライアンス意識を向上させることが不可欠です。当社では全ての役職員に対し繰り返しコンプライアンス研修を実施し、その内容に関する改善提案やフィードバックが行われています。こうした双方向性の取り組みを粘り強く続けることがガバナンスの強化につながっていくと考えています。

取締役会の議論の様子はどのようなものでしょうか。

坂井取締役会を活性化することが社外取締役の重要な役割だと認識しています。取締役会で提出される資料をできる限り咀嚼して、新たな視点からの質問や、具体的な指摘や提案をするよう心掛けています。

加藤取締役会で審議される内容は、経営会議で社内の議論は尽くされています。社外取締役には、問題提起や質問をして議論を引っ張っていく責任があります。社外取締役の人数が増えて異なる立場からの意見が出てくるようになり、取締役会の議論が非常に活発になりました。以前は報告の時間が長かったのですが、現在は2.5~3時間の取締役会の時間の多くが議論に充てられています。異なる視点の発言で議論の幅が広がって深みが増し、新しい方向性を見出したり、社内だけでは思いつかない落とし穴に気付いたりといったことが実現しています。

保土谷化学グループの取締役会で、何が課題だと感じていらっしゃいますか。

加藤2023年6月には、社外取締役が1人交代しました。私は指名・報酬委員会の委員長として新任の方と意見交換をする機会をいただき、新しい分野の経歴や経験、見識のある方だと納得して、社外取締役として指名させていただきました。今回の指名は、新しい視点を持つ方がたまたま女性であり、女性役員の登用を進めるという世間の流れに合致し、取締役会の多様性がいっそう広がりました。

坂井今回新たに就任された藤野取締役は、他社でも社外取締役の経験があります。その経験を活かして、取締役会の運営方法の改善提案といった新たな視点を加えていただきたいと考えています。多様性という面では、人種的な多様性にはまだ距離があるように思いますが、社外取締役に限らず役員、管理職など、女性の活躍をしっかり進めていかなければなりません。
日本企業では検査不正等の不祥事が続いています。不正はどこの組織にもいつでも起こりうるものだとの認識に立って、ガバナンス強化のための会社の体制が然るべく構築されているか、内部統制や内部監査が適切に機能しているか、取締役会での質疑や議論を通じてしりチェックしていくことが重要だと考えています。

加藤新しい方向性を見出したり議論をしたりするために、常に勉強する姿勢が必要です。社会や経済、国際情勢などの変化に対し、日常的にアンテナを広く張って幅広く学び、それを取締役会での議論に反映させていくということも大切です。

サステナビリティ推進委員会に期待することをお聞かせください。

加藤当社では全社員に向けてサステナビリティに関する世の中の動きや当社の取り組みを「サステナニュース」という形で発信しています。サステナビリティは、社長をはじめ、役員、部門長、全ての社員が問題意識を持って仕事に取り組むことが大切であり、サステナビリティ推進委員会には一人ひとりの社員が認識できる活動をぜひ進めていただきたいと思っています。

坂井当社の社業である、スマートフォン向けの有機EL資材や中間製品の製造、太陽電池用資材の開発などは、省エネ、省資源といった社会のサステナビリティに貢献できる分野です。一方で、CO2排出量については、今後、サプライチェーン全体をカバーするSCOPE3を含めた対応が求められていくことになりますが、数字だけではとらえきれない課題もあり、サステナビリティ推進委員会を中心に、社員一人ひとりの意識向上を図っていくことが最も重要です。

次の100年も持続的な成長を実現するために必要なことは何だとお考えですか。

坂井社員一人ひとりの創造力が会社の未来を左右します。社員が気持ちよく働き能力を発揮することで生まれる創造性抜きに会社の成長は望めません。社員の創造力を高めるために、社員一人ひとりの育成方針を検討するといったきめ細かい対応を進め、社員が自己研鑽を進めやすい環境を整備して、会社を、社員がスキルを身に付けて成長する場、自己実現する場、成長実感を得ることができる場にすることが重要です。
また、人材育成を進めるために、管理職研修で部下の育成業務を重視することやエンゲージメント調査結果を活用することによって、管理職が部下の育成にさらに注力できるようにすることが必要です。
さらに、労働力不足に対応するため、シニア向けの研修やリスキリング研修を拡充して、シニア人材の活用や活性化を進めることが必要と考えています。

加藤中期経営計画「SPEED25/30」策定時には、2050年までの環境変化を分析し、2030年のありたい姿を検討し、2025年の数値目標をバックキャストで設定しました。100年というのはこれの繰り返しで、世の中の変化に適合して事業を発展させるには何をすべきかを常に考え続けることになります。その基礎となるのは人材であり、保土谷化学の人材がどのように将来を見て、そこから何を考えて100年の持続的な成長を続けていくのか、楽しみに思っています。

新任社外取締役メッセージ

社外取締役
(監査等委員)

藤野 しのぶ

これまでの経験を活かし、保土谷化学グループの企業価値向上に力を尽くします。

これまで企業の価値は数字で表される財務情報に偏りがちで、企業の全体像をとらえづらい面があったように思います。それが最近では、非財務情報が企業価値に大きく影響すると言われるようになり、私も人材育成の仕事に長年携わってきた者として、我が意を得たりと感じています。
「SPEED25/30」の二つのEは、エンゲージメントとESG。保土谷化学ではエンゲージメントスコアのほぼ毎月の確認や女性管理職比率の向上に取り組み始め、すでに成果が出始めていると聞いています。今後も「SPEED25/30」への取り組みを通じて、役職員の方々一人ひとりの力を存分に発揮できる環境作りを継続し、財務・非財務両面の価値がさらに大きく成長するよう、私もこれまでの経験を活かして力を尽くしたいと考えています。