皆様
サステナビリティ関連のページにアクセスして頂き、有難うございます。 保土谷化学グループのサステナビリティ経営に対する考え方、姿勢について述べさせて頂きます。
当社グループは、事業を通じて持続可能な社会に貢献することをビジョンに掲げています。2023年度には、製品構成の変化を受けてエネルギー原単位と二酸化炭素排出原単位(売上高原単位)が2025年度の目標を前倒しで達成しました。また、FTSE Russellのスコアが3.6に向上し、EcoVadisのシルバーメダルを維持、CDP(Carbon Disclosure Project)のランクがBに上昇し、「統合報告書2023」は、第3回日経統合報告書アワードにて「優秀賞」を受賞するなど、外部からの評価も向上しています。
これらの評価向上は、当社のこれまでの取り組みを大きく変えたわけではなく、実直な取り組みが外部から見えにくかったことを反省し、ESG情報の開示を充実させた結果であると認識しています。また、限られたリソースの中でも、従業員一人ひとりが高い意識を持って「環境にやさしいモノづくり」に向き合ってきた結果だと考えています。
当社が掲げるVISION:目指す企業像では、「環境にやさしいモノづくり」を謳っています。これは「環境にやさしい製品(モノ)をつくる」ことと、「環境にやさしい製造方法(モノづくり)を取り入れる」ことの2つの意味を含んでいます。
中期経営計画「SPEED 25/30」のフェーズ2(2026~30年度)では、環境と化学の調和に役立つ製品・サービスの展開や、サステナビリティの取り組みの加速、持続可能な地球と社会への貢献、環境調和型の生活文化創造への貢献を目指しており、フェーズ1(2021~25年度)からさらに踏み込んだ内容の検討を進めていきます。
また、化学メーカーとして安全操業は第一の使命です。
2023年度には全事業所で無事故を達成しました。引き続きレスポンシブル・ケア活動を一層充実させ、無事故・無災害・安全操業に取り組んでまいります。
私は、2016年の社長就任当時から、「希望が持て、働きがいのある、勤めていて良かったと思える会社」にしようと取り組んできました。目指すは、生産性が高く収益性も高く、ひいては給与水準が高い会社、そして仕事内容に誇りが持てる会社であり、それが「やりがい・働きがい」につながります。さらに、安心して仕事ができる職場環境や、適切なワーク・ライフ・バランスも必要と考えており、取り組みを進めてきました。
化学メーカーとして、女性の入社が少ないという課題に直面していますが、これはダイバーシティ推進の機会でもあります。海外の化学メーカーでは現場で活躍する女性従業員が増えています。当社でも、DXを積極的に推進し、計器室での監視業務や判断業務にシフトできるような職場環境を整えることで、女性の活躍の場を広げることができます。
女性管理職比率は2025年度までに13%にすることを目標としており、2023年には女性社外取締役を招聘し、2024年には女性執行役員も就任しました。今後は、経営会議に参加するような役職でも、積極的に女性を登用し、経営への参画意識を高めたいと考えています。
当社の教育プログラムは充実しており、次世代経営人材や女性社員のキャリア教育を行っています。2023年度は新たな試みとして、若手研究者を韓国で研修させました。研修後、研究者は一様にスピード感が違うと口にしました。
就業環境が異なることもありますが、スピードの違いを感じるだけでなく、自身の仕事の進め方にも良い影響を及ぼしてもらうことや、グローバルな視点を養ってもらうため、今後はローテーションで韓国に研究者を順次送り込み、比較的長期間の研修を受けさせる計画です。また、売上高の50%が海外に由来し、海外拠点が多い当社にとっては、グローバル人材の育成が不可欠です。特に、中国語や韓国語といった非英語圏の言葉や文化に精通した人材の育成が重要です。海外でのビジネス経験はキャリア形成においても非常に有益であり、社員にはどんどん挑戦してほしいと考えています。
価値創造の担い手は自ら学び考え、行動できる人材です。常に学び続けることができる環境の提供が、新製品の開発や生産性の向上につながります。次世代の経営を担う人材の育成については、取締役会や経営会議に構成メンバー以外も陪席させ、議論を見聞きし、勉強してもらうようにしています。取締役会には執行役員が、経営会議には部長クラスの人材が陪席し、適宜、案件の説明や質疑応答に加わることで、実務と教育を兼ね備えた場としています。
先日、社外取締役から「松本がすべてを話してはいけない。人材を育てる意味でも、ほかの人に答えさせた方がよい」との助言をいただきました。社外取締役が次世代の経営人材の人となりや考え方を理解する機会を提供するためにも、教育の場としての会議の重要性を改めて認識しました。
海外の子会社、特に韓国では、お国柄もあるとは思いますが、迅速な意思決定を求められることが多いです。また、韓国では配当よりも研究開発への投資を優先し、企業が成長することで株主をはじめとするステークホルダーへの還元を行うという考え方が強いようです。保土谷化学グループでは、韓国の子会社には、資本構成に基づくガバナンスだけでなく、理事~課長クラスの人材を派遣し、常駐させ実務も担わせています。彼らは、子会社の経営者層からの信頼も厚く、密接なコミュニケーションを通じて事業の進め方や方向性の確認を行い、当社の経営層とのパイプ役を果たしています。
世界的にガバナンスの重要度が増し、企業に対する外部の目も厳しくなっていますが、ガバナンスの名のもとに子会社の独自性をつぶさないようにしつつ、守るべきガバナンスの実効性を担保し、グループ全体の企業価値向上を目指しています。これが当社の隠れた優位性になっていると考えています。
長期的に当社グループが本当に取り組まなければいけない課題は、グリーントランスフォーメーション(GX)だと考えています。
GXを推進するための技術開発として、バッテリー用材料の開発・製造に加え、ペロブスカイト型太陽電池※の研究に取り組んでいます。ペロブスカイト型は、シリコンの代替として有機化合物を太陽電池に利用するものであり、日本政府も力を入れて研究を推進している分野です。高耐久で、高効率の材料を提供することで、早期の実用化に貢献したいと考えています。
さらにGX 推進には、デジタル技術の活用によりイノベーションを推進することで競争力が確保されると考えられ、「SPEED25/30」の重要課題の一つであるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進にも一層注力してまいります。
また、当社が持つ技術の延長線上でできることとして、環境への負荷を低減するためのサステナブル製品の開発、特に農業・食品の分野での貢献も目指しています。2023年2月に発表した朝日アグリア(株)との協働では、両社が持つ土づくりと土壌改良技術の共通性に着目し、肥料効果や湿害対策、作業効率化などが期待される堆肥と酸素供給材の複合資材を開発し、作物育成の効率化・安定化に大きく寄与できると期待しています。また、この取り組みは、化学農薬や化学肥料の低減にも寄与するものと捉えています。夢のような話かもしれませんが、この事業を軌道に乗せて、将来、アジアや世界に広げられれば、人口増加による食料不足という世界的な社会課題の解決への貢献につながると考えています。
※ペロブスカイト型太陽電池:光を電気に変換する結晶構造を持つ、ペロブスカイトを素材とする太陽電池。塗布や印刷技術で量産できることから、低コスト化が期待される。
私は今、「変わろう、保土谷化学」を合言葉に掲げています。この合言葉の意味するところは、表面的な一部の変化ではなく、「SPEED 25/30」に掲げた目指す姿・ありたい姿に中身から大きく変わる「トランスフォーム」を果たすことで、この先100年も成長し続ける企業でありたいということです。一方で、100年企業として培ってきた「本邦嚆矢」の精神に代表される保土谷化学のDNAや、脈々と継承されてきた技術、また、良い製品を開発して作って販売するというメーカーとしての喜びなど、変わらずに大事にしていかなければならないものもあります。
2021年4月にスタートした現在の中期経営計画「SPEED25/30」は、その2年前から準備を開始し、2050年に想定される事業環境からバックキャスト方式で成長戦略を描き、その過程で「変えるもの」「変えないもの」についてはこだわりを持って検討してきました。間もなく中期経営計画のフェーズ2の策定準備に入りますが、世界情勢が目まぐるしく変化する中で、2050年の事業環境をどう想定するのか、再検討していかなければなりません。経営理念「環境調和型の生活文化の創造に貢献します」という軸はそのままに、これから2年弱をかけて2030年度の「ありたい姿」をもう一度見直し、ビジョンや目指す企業像、そして事業ポートフォリオの構成を、経営陣のみならずグループ全体で議論を進めていきます。
足元の動きにとらわれすぎず、どう2030年度の「ありたい姿」に近づいていくか。「変えるもの」「変えないもの」をしっかり見極めながら、スピーディーに「目指す姿」「あたい姿」に近づいていけるよう、保土谷化学グループすべての役職員が一丸となって本気で取り組んでいきますので、ステークホルダーの皆様には引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。