TOPメッセージ

皆様
サステナビリティ関連のページにアクセスして頂き、有難うございます。 保土谷化学グループのサステナビリティ経営に対する考え方、姿勢について述べさせて頂きます。

事業を通じた持続可能な社会への取り組み

当社グループは、事業を通じて持続可能な社会に貢献することをビジョンに掲げています。現在のように環境問題が大きく取り上げられる以前から、レスポンシブル・ケア(RC)活動に注力してきましたが、サステナビリティ経営はその延長線上にあると捉えています。一方で、RC活動とは異なる機能・役割を充足するために、2021年にはサステナビリティ推進委員会を設置し、TCFD※1分科会や地球環境分科会などの組織を通じた活動を行っています。
1997年からのRC 活動に加えて、サステナビリティ推進体制の下、積極的な情報開示にも取り組んだ結果、FTSE Russell※2のスコアは年々上昇しています。2022年度は、FTSE Blossom Japan Sector Relative Index※3の構成銘柄に採用されたほか、EcoVadis※4のシルバーメダルも獲得しました。これは当社グループのESG経営が一定の評価を得ていることの証と捉えています。環境に優しい製品や環境に配慮した原材料を使用した当社製品に対する注目度も高く、土壌改良を目的とした酸素供給剤と、バイオ原料を使用したウレタン原料や剥離剤がFTSEのGreen Revenues Data Model※5に指定されました。これらの製品が保土谷化学(個別)の売上に占める割合は、2015年度には3%程度でしたが、2022年度には12%まで伸長しており、事業を通じた持続可能な社会への貢献を実感しています。

※1 TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース。

※2 FTSE Russell:英国に本拠を置く、インデックス提供企業。

※3 FTSE Blossom Japan Sector Relative Index:各セクターにおいて、環境、社会、ガバナンス(ESG)の対応に優れた日本企業のパフォーマンスを反映する、FTSE Russellが提供するインデックス。

※4 EcoVadis:企業の社会的責任と持続可能な調達を評価するための、評価プラットフォーム。

※5 Green Revenues Data Model:グリーン製品およびサービスから収益を得ている企業を特定し、製品の「グリーン度」を分類するモデル。

環境課題への対応

当社グループは、2022年11月にTCFD提言への賛同を表明しました。原材料の差異といった個別の製品に対するカーボン・フットプリントを求められるようになっており、今後、SCOPE3についての取り組みも含め、積極的な情報開示に努めていきます。すでに複数の工場・事業所でCO2フリー電力を導入しており、2022年度には、低炭素投資・対策の推進、省エネ推進のため、保土谷化学グループ内で見積もる炭素価格として、インターナル・カーボン・プライシングの考え方も取り入れました。
一方で課題もあります。当社の基盤事業の一つである過酸化水素およびその誘導品の製造に必要な水素を天然ガスから製造する過程でCO2が発生しています。近い将来、グリーン水素※6やブルー水素※7が安価に入手できるようになれば、CO2排出量の削減のみならず、当社が所有する水素イフラを活用することで、政府が提唱する水素社会の到来に大きく貢献できると考えています。

※6 グリーン水素:再生可能エネルギーを使用して生成された水素。

※7 ブルー水素:石油や天然ガス等の化石資源から生成される水素のうち、生成の際にCO2が大気中に排出されないよう処理を行った水素。

人的資本への取り組み

私は、企業が持続的な成長を実現するためには、人材が最も重要な資本であると考えています。この考えの下、2016年に社長に就任した当初から、会社の成長につながることを信じて人的資本経営に力を入れています。社長就任時のあいさつの中でも、100年企業となった私たちが将来に引き継ぐべきレガシーとして、事業や製品、技術、生産拠点、お客様・お取引先様など、目に見える形あるモノだけではなく、メーカーとして製品を開発・販売する喜びや、中期経営計画に掲げるビジョン、さらにはお客様をはじめとする全てのステークホルダーへの感謝の気持ちといった、人材から生まれる目に見えない大切なモノが、目に見えるレガシーに、より磨きをかけていくと伝えました。最近では、在宅勤務制度の定着や、再雇用希望の登録ができるカムバック・エントリー制度、時間単位の年休取得やリフレッシュ休暇制度、服装の自由化など、柔軟な働き方を実現する仕組みの構築を進め、役職員全員が働きがいを実感できることに留意して取り組んできました。これらの取り組みの結果、当社は2021年度から健康経営優良法人として認定されています。加えて、2021年度からは従業員満足度の向上を図るため、エンゲージメントスコアを定期的に測定し、質・量両面で従業員エンゲージメントを把握することに努めています。
また、当社グループでは、海外売上高が売上の半分を占めており、グローバル人材の育成が喫緊の課題となっています。1989年からは海外トレーニー制度を導入し、継続的に人材の育成に取り組んでいて、私はこの制度で米国へ派遣された第1期生です。その際、単に語学を習得するだけではなく、現地のビジネス慣習や文化の違いに触れることの大切さを実感しました。現在は欧米に加え中国語圏や韓国語圏へ派遣先を増やしています。
評価・報酬の面でも新しい取り組みを進めています。2019年度から業績連動型賞与を取り入れています。また、一部の部門長に対し、同僚や部下からの評価も含めた多面的評価を導入しました。さらに、2023年4月からは、企業価値と従業員双方の持続的な向上・成長の実現のために、管理職を対象に従業員株式報酬制度を開始しました。

コーポレート・ガバナンスのさらなる強化に向けて

当社は早くからコーポレート・ガバナンスの改革に取り組んでおり、2015年に監査等委員会設置会社へ移行し、2016年には役員の株式報酬制度を導入しています。2023年6月には人材戦略に通じた女性の社外取締役が就任し、取締役会の多様性が高まり、スキルの幅が広がりました。今後、取締役会の多様性をさらに高めるために、社内からも女性役員を登用したいと考えております。
後継者の育成も重要な課題です。私は、保土谷化学の企業文化を理解し、経営に強い意欲を持っている方が後継者にふさわしいと考えております。現在は、少人数のエグゼクティブ研修を実施しているほか、部門長にも経営会議に出席してもらい、自部門について説明を行ったり、経営層がどのような情報を求め、どのように議論を行っているのかを学んだりする場としています。さらに、取締役会のメンバーが次の世代の候補者について知見を得られるよう、社外取締役と対話する機会も設けています。

サステナブルな社会を実現するためのグリーンイノベーション

長期的に当社グループが本当に取り組まなければいけない課題は、グリーントランスフォーメーション(GX)だと考えています。
GXを推進するための技術開発として、バッテリー用材料の開発・製造に加え、ペロブスカイト型太陽電池※8の研究に取り組んでいます。ペロブスカイト型は、シリコンの代替として有機化合物を太陽電池に利用するものであり、日本政府も力を入れて研究を推進している分野です。高耐久で、高効率の材料を提供することで、早期の実用化に貢献したいと考えています。
さらにGX 推進には、デジタル技術の活用によりイノベーションを推進することで競争力が確保されると考えられ、「SPEED25/30」の重要課題の一つであるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進にも一層注力してまいります。
また、当社が持つ技術の延長線上でできることとして、環境への負荷を低減するためのサステナブル製品の開発、特に農業・食品の分野での貢献も目指しています。2023年2月に発表した朝日アグリア(株)との協働では、両社が持つ土づくりと土壌改良技術の共通性に着目し、肥料効果や湿害対策、作業効率化などが期待される堆肥と酸素供給材の複合資材を開発し、作物育成の効率化・安定化に大きく寄与できると期待しています。また、この取り組みは、化学農薬や化学肥料の低減にも寄与するものと捉えています。夢のような話かもしれませんが、この事業を軌道に乗せて、将来、アジアや世界に広げられれば、人口増加による食料不足という世界的な社会課題の解決への貢献につながると考えています。

※8 ペロブスカイト型太陽電池:光を電気に変換する結晶構造を持つ、ペロブスカイトを素材とする太陽電池。塗布や印刷技術で量産できることから、低コスト化が期待される。

次の100年先においても「化学で夢をお手伝い」するために

当社は長年、「環境調和型の生活文化の創造に貢献」することを経営理念に掲げてきました。近年、SDGsをはじめ、企業が社会から求められる役割を考えると、この経営理念の重要さを改めて実感しております。
中長期的な企業価値の向上と、持続可能な社会構築に対する貢献は、個別に考えるものではなく、当社グループのパーパスとして目指していくものです。「SPEED 25/30」で掲げたありたい姿、目指す姿を実現するためには、研究開発と生産と販売部門が三位一体となり、5つの事業セグメントがそれぞれの分野で高いスペシャリティを発揮した企業活動を続けていくことが必要です。創業100年を迎えた当社グループが、次の100年に向けて成長していくには、当社グループの企業メッセージである「化学で夢のお手伝い」をさまざまな形で実現できている未来図を目指していかなければならないと考えています。夢というと遠い先のことのように思えますが、未来は現在が連綿とつながったその先に存在しています。30年後の2050年には今年入社した社員は中核人材へと成長を遂げています。私たちがこれから会社を担っていく社員に上手にバトンを渡すためには、何をするべきか。それは、顧客に対しては持続可能な社会に役立つための製品、サービスを提供すること。そして、従業員に対しては希望が持て、働きがいのある、勤めていてよかったと思えるような会社にするための組織、風土づくりを通じ、エンゲージメントの向上を図っていくことであると考えます。
当社グループは、2030年度のありたい姿の実現に向けて、中期経営計画で掲げたさまざまな施策に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献することで、長期に継続して事業価値を向上させてまいります。ステークホルダーの皆様には当社グループへのご理解とご支援を賜りますよう、引き続きよろしくお願い申し上げます。