TCFD提言に基づく気候変動関連の情報開示


基本的な考え方

近年、気候変動問題を中心に世界レベルでの社会課題が深刻化し、サステナビリティ経営が求められる中、保土谷化学グループは、2021年度から開始している、中期経営計画「SPEED 25/30」のVISION(目指す姿)に掲げる持続可能な地球・社会の実現に向けた責任を果たすため、「経済利益の追求と社会課題の解決を両立させ、全てのステークホルダーに価値を提供する」ことを基本としております。
「SPEED25/30」のVISION(目指す姿)は、「スペシャリティ製品を軸としたオリジナリティにあふれるポートフォリオと環境に優しいモノづくりで、持続可能な社会の実現に貢献する企業」とし、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を重要な経営課題であると位置づけております。
TCFDの提言に対しては、化学企業として気候変動に真摯に向き合い、その取組みを推進し、積極的な開示に努めてまいります。
また、2022年11月にTCFD提言へ賛同表明しております。

ガバナンス・リスク管理

サステナビリティ推進委員会は、「経営理念」、「企業行動指針」に従い、持続可能な地球・社会の実現に向けた責任を積極的に推進していくための、委員会組織です。その下部組織として、地球環境の保護・改善に関する活動を推進する「地球環境分科会」、TCFD提言に対応した活動を推進する「TCFD分科会」を設置しております。
リスクマネジメント委員会では、全社的なリスク認識・評価、リスク軽減策を討議し、「TCFD分科会」で進める気候変動に関するリスクと機会の認識およびその対応についても、リスクマネジメント委員会の中で「環境リスク」として、討議しております。
各委員会、分科会での討議内容は、取締役会および経営会議に付議・報告し、経営陣が一体となって取組んでおります。

戦略・リスク分析

保土谷化学グループは、社会の変化に応じて、たえざる革新を続け、環境調和型の生活文化の創造に貢献することを経営理念としております。2015年のパリ協定締結後、GHG排出量削減は、全世界で取り組む課題になっておりますが、当社グループは、従前より削減に前向きに取組んできており、1990年度に21.1万トンあったCO2排出量は、主として工場での燃料転換等の施策を進めた結果、2020年度は4.8万トンと、30年間で約4分の1になっております。
現在の中期経営計画「SPEED25/30」の事業戦略「新たなポートフォリオへの展開」を進めることで、生産量増加が見込まれますが、2030年を見据えた長期的な視点で 予測されるリスクをTCFDのリスクカテゴリーに分類し、気候シナリオ分析を進めております。脱炭素社会への移行に伴うリスクを「1.5℃シナリオ」、気候変動の激甚化に伴うリスクを「4℃シナリオ」として分析しました。シナリオ分析の解析結果から、移行リスクと物理リスクへの対応と機会について、新たな取組みを含め推進してまいります。

●シナリオ
1.5℃シナリオ
  • 気候変動に対する政策・法規制 炭素税が世界的に導入され、気候変動対応の厳しい規制も世界的に施行されている
  • 気候変動 上記により、気候変動は抑えられ、自然災害の発生も、現在から大きく増加しない
  • エネルギー費用が大幅に高騰し、原材料の調達に大きな影響を受ける
4℃シナリオ
  • 気候変動に対する政策・法規制  西側先進国では、厳しくなることが予想されるが、後進国では政策・法規制の強化は進まない(=GHG排出量削減が十分に進まない)
  • 気候変動 上記の状況により、気候変動への影響が拡大(=自然災害の発生は現在以上に多発している)
  • エネルギー費用の増加も限定的となり、大きな影響とはならない
●シナリオ分析
リスク・機会 項目 リスク 機会 対応 事業への影響
移行リスク
1.5℃シナリオ
政策
規制
  • エネルギー関連法規制強化
  • CO2削減
 
  • 省エネの推進
  • 再生可能エネルギーの利用
  • 製造プロセスの見直し
炭素税の導入等による、エネルギーコスト、原材料調達コストの増加
環境マネジメントの強化   これまでの知見を活かした社内体制の強化 マネジメント体制の整備と向上のための費用負担の増加
技術 環境対応のための新技術の創出
  • 要求に応じるための研究開発の強化
  • 製造プロセスの見直し等による生産技術力の強化
【リスク】
研究開発費、製造コストの増加

【機会】
要求に応える製商品・サービスの提供による市場シェアの維持と拡大
市場 環境重視の市場形成 市場・顧客のニーズの深堀による事業戦略の見直しと強化とそれに対応する研究開発・製造技術力の向上 【リスク】
研究開発費、製造コストの増加

【機会】
要求に応える製商品・サービスの提供による市場シェアの維持と拡大
評価 ステークホルダーの環境重視行動 地域社会、従業員、株主との対話の充実と体制の確保
物理的リスク
4.0℃シナリオ
慢性 平均気温の上昇 製造設備の省力化・自動化 【リスク・機会】
特にアグロ事業の市場変化への対応
急性 地震、台風、水害の増加   複数購買の推進、BCPの強化 工場操業停止や原材料の調達不能
●移行における主な事業機会
セグメント 機会
機能性色素
  • アルミ着色用染料
    環境対応型製品の開発による販売の拡大
  • バイオ事業
    PCR診断用材料から医療用への展開
機能性樹脂
  • PTG(ウレタン原料)
    バイオ化によるグリーンケミストリーの推進
基礎化学品
  • 水素
    水素社会到来による事業機会の拡大
アグロサイエンス
  • 過酸化水素・誘導品
    農業資材分野への用途拡大
指標と目標

保土谷化学グループは、中期経営計画「SPEED 25/30」の2025年度非財務目標(気候変動関連)として、以下を掲げています。
二酸化炭素排出削減については、生産量の増減による排出量の変動も見据え、数量および原単位の両面で目標値を設定しております。これらは、「地球環境分科会」にて検討の上、「サステナビリティ推進委員会」で議論を実施し、取締役会・経営会議において、その進捗を確認しております。
また、2023年度の実績では、二酸化炭素の排出量の削減、エネルギー原単位の削減は、2025年度目標を達成し、産業廃棄物発生量の削減も、前年度発生量以下を達成しております。尚、2023年度の二酸化炭素排出量原単位およびエネルギー原単位は、製品構成の変化を受けております。

非財務目標 2022年度実績 2023年度実績 2025年度経営目標
CO2排出量
(CO2排出原単位)
4.57万t
(1.055t-CO2/売上高・百万円)
3.56万t
(0.805t-CO2/売上高・百万円)
4.34万t
(0.868t-CO2/売上高・百万円)
エネルギー原単位 0.636kl/
売上高・百万円
0.495kl/
売上高・百万円
0.606kl/
売上高・百万円
産業廃棄物発生量 3,477t 2,523t 前年度発生量以下

※2023年度のCO2排出量原単位およびエネルギー原単位は、製品構成の変化を受けております

気候変動への対応について

保土谷化学が排出する温室効果ガス(GHG)のほとんどが、二酸化炭素※1です。2023年度のGHG排出量は、3.56万t-CO2です(SCOPE1※2+SCOPE2※3)。今後、生産量増加が見込まれるなか、2030年度を見据えた長期的視点で緩和と適応の両面から気候変動対応に取り組みます。
二酸化炭素排出削減を促進するため、保土谷化学の技術に加え、省エネ、創エネの取り組みや再生可能エネルギーの導入検討に併せ、自らの炭素排出量に対して価格付けを行う、ICP(Internal Carbon Pricing)についても、2022年度から導入を開始しております。低炭素社会に向けた気候変動対応として、投資を後押しできる体制とすることで、2030年度には基準年2013年度に対し▲38%を目指します。

※1 非エネルギー起源のCO2排出量は含んでおりません

※2 SCOPE1:直接排出量

※3 SCOPE2:エネルギー起源間接排出量

●CO2排出量※1推移

※1 非エネルギー起源のCO2排出量は含んでおりません

※2 2030年度の削減目標は、政府発表の産業別削減目標としております

●CO2排出量
CO2排出削減のロードマップ