保土谷化学グループの事業活動におけるエネルギー消費によるGHG排出、水資源消費、化学物質の大気・水・土壌への排出などは、地球環境に影響を与える可能性があります。
そのため、保土谷化学グループは、全ての化学物質の排出量ならびに廃棄物の発生量を継続的に低減させることは化学メーカーの重要な責務の一つと捉えており、地球環境への負荷軽減の最小化を目指し、事業活動に伴う環境負荷の低減と化学物質の適正管理の両面から環境保全に取り組んでおります。
その実施体制として、レスポンシブル・ケア基本理念に基づき、2001年に保土谷化学の国内全事業所で取得した、環境マネジメントシステム(ISO14001)を2010年に統合し、国内に拠点を置くグループ会社全社を対象に統合認証を取得し、2022年度の取得率は100%になっております。関係会社であるSFC CO.,LTD.は、ISO14001を独自に取得しております。
また、環境保全に関するコストやその効果を把握し環境経営に役立てるため、環境会計を集計しております。
保土谷化学グループは、中期経営計画のVISIONに掲げる持続可能な地球・社会の実現に向けた責任を果たすため、気候変動対応を重要な経営課題であると位置づけ、従前より温室効果ガス(GHG)削減の取り組みを前向きに進めております。
保土谷化学が排出するGHGのほとんどがエネルギー起源のCO2となります。2022年度のGHG排出量は、45,722tです(SCOPE1※1+SCOPE2※2)。
2022年度は、2021年度に導入した ICP(InternalCarbon Pricing) を活用した投資を実施しました。今後もエネルギー原単位削減に向け、長期的視野での脱炭素投資による省エネルギー機器の導入や再生可能エネルギーへの切り替えなど排出量の削減への取り組みを進めてまいります。なお、SCOPE3※3については、他社の取組み状況の把握を行っている段階です。
引き続き、GHG排出量の把握と、その結果の解析を通して削減計画を策定し、計画に沿ったGHG排出削減に努めてまいります。
また、保土谷化学は、政府が推進する地球温暖化対策のための国民運動「COOL CHOICE」に賛同しており、クールビズに加え「通年ノーネクタイ」を導入、事業所では、「ノーマイカーデー」の実施等地道な活動も行っております。
※1 SCOPE1:直接排出量
※2 SCOPE2:エネルギー起源間接排出量
※3 SCOPE3:その他の間接排出量。15のカテゴリーに分類
CO2排出量
工場での化学品製造の際、燃料の燃焼などにより、SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)、ばいじんが発生します。
保土谷化学では、工場で使用する原燃料の都市ガス化を推進し、2011年度で切り替えを完了させたことにより、SOx排出量は2012年度より「ゼロ」を継続しております。
また、NOx 排出量、ばいじん発生量についても、集塵機・洗浄塔の導入や触媒の使用による除去など、より大気への排出を抑制する対策を行っており、大幅な削減を達成しております。
大気汚染防止
保土谷化学の工場が立地する地域の水ストレスを、世界資源研究所(WRI)の水リスク評価ツールAQUEDUCTを基に分析すると、郡山市と周南市は「低~中」、横浜市は「中~高」で、「高い」とされる地域での取水はありませんでした。この状況は、50年後も変わりませんでした。2022年度各工場で使用した用水10,680千tのうち99%が河川からの取水で、飲料水にも用いられる上水の使用は1%程度とわずかであり、さらに地盤沈下の原因となる地下水は使用しておりません。水資源の有効利用は持続的な生産活動の基盤と考えており、保土谷化学の工場が立地する地域の河川源流保全に努めてまいります。
また、製造工程から排出される排水は、工場内の排水処理施設で高度処理し、水質汚濁物質の排水規制値をクリアした後に、公共水域に排出されます。
2022年度も使用水量や水質に関する違反はしておらず、今後も水質の向上に努め、海や河川への環境影響リスクを低減してまいります。
水質汚濁防止
保土谷化学グループは、廃棄物の3R+Renewable(リデュース:削減、リユース:再利用、リサイクル:再生利用、リニューアブル:再生可能資源の活用)を推進しております。中期経営計画で「対前年度発生量以下」をKPIとし推進しております。2022年度の総発生量および最終処分量は、それぞれ対前年度比27%、63%増加しました。生産品目構成差等の影響もありますが、増加した事実を重く受け止め、取り組みを強化し、削減に努めてまいります。また、2022年4月1日に施行された「プラスチック資源循環促進法」に基づき、事業活動に伴って発生するプラスチック使用製品廃棄物等の削減にも努めており、2022年度のプラスチック使用製品廃棄物等の発生量は126tでした。
産業廃棄物
化学物質の環境負荷低減を図るため、PRTR法(化学物質管理促進法)に基づきPRTR対象物質の排出・移動状況の把握を実施、国への届出を行っております。保土谷化学では、PRTR法で定められている第1種指定化学物質(462物質)のうち、38物質の取り扱いがあります。環境保全の観点から化学物質の環境への排出や廃棄物としての移動などの実態を把握し、引き続き対象物質の排出量・移動量の削減に努めてまいります。
※PRTR:Pollutant Release Transfer Register
2022年度PRTR 対象物質
排出量・移動量
※うち1.15tは隣接する企業の排水処理設備に送液され、処理後公共用水域に排出
保土谷化学グループは、環境保全に関するコストやその効果を把握し環境経営に役立てるため、2021年度より環境会計を集計しました。2022年度の環境保全に関する主な支出のうち、最大の費用額は資源循環コストで、189百万円となりました。
郡山工場
大越 崇弘
私たちの生活の中でエネルギーは必要不可欠な物です。しかし、エネルギーを消費することで地球温暖化が深刻な問題になっており、現在は、世界規模で省エネルギーが重要課題とされています。郡山工場の省エネルギーの取り組みとして、今まで使われていなかった熱交換後の排温水を有効活用するため、2022年12月にICPを活用してヒートポンプを導入しました。この排温水を熱源とし、効率よくボイラー給水を加温することで171t-CO2/年の削減と113千N㎥/年の都市ガス使用量の削減が見込まれます。また、設備を導入するのではなく、節電や節水など私たちが身近にできる省エネも数多くあります。地球温暖化防止のため、郡山工場で働く一人ひとりが問題意識を持ち、これからも省エネ活動に取り組んでいきます。
郡山工場
平山 成弥
省エネルギーは、これまでコストダウンの手段として期待されてきました。このことは今も変わりませんが、現在は、地球温暖化防止やエネルギーの安定供給といった、社会課題解決を図る手段として、その重要性が日に日に高まっています。製品をつくるには、燃料や電力といったエネルギーが不可欠です。とりわけ郡山工場はエネルギー消費が大きく、省エネ法に基づく集計では、国内3工場のエネルギー消費量の内、約70%を郡山工場が占めています。私が務めているエネルギー管理士には、エネルギー使用の効率化、つまり省エネの推進を図る役割があります。高効率設備の導入や、廃エネルギーの削減・再利用などの生産に関わる方策だけでなく、照明や空調などの生産には直接関わらない一般設備の省エネにも目を向け、全職場一丸となって社会的責任を果たしていきます。
南陽工場
福田 孝一
南陽工場では、2021年度環境保全として、産業廃棄物埋立処分量の削減を、「前年度実績以上の再生化(リサイクル)率」を目標に、以下の内容について取り組んでおります。
保土谷アグロテック株式会社
原田 靖之
農薬は、雑草や病害虫を防除するために使用者が安全に使用でき、散布した農薬が水産動植物を含む周辺環境へ与える影響が小さい製品開発が非常に重要な課題となります。製品の製剤処方、使用器具を工夫することで、水産動植物への影響を抑える、ヒトの暴露、周辺への飛散を減少させることが可能となります。
近年、使用する農薬に独自の安全性基準を設ける「インフラ・交通関連」の企業もあり、農薬の使用注意事項表記に水産動植物に影響を及ぼすおそれがある旨が記載されている製品の使用を禁止しているところもあります。現在、日本で販売されているほとんどの「除草粒剤」はこの注意事項が記載されていますが、私たちは有効成分とその配合量、製剤処方を工夫することで、水産動植物への影響を抑え、高い効果を発揮する「除草粒剤」を開発し、販売を開始しました。今後も安全性、環境を意識し、製品開発に取り組んでいきたいと思います。
郡山工場
佐藤 俊
私は、水質関連の公害防止管理者として、各製造工程排水や総合排水の分析値の解析、水質の品質監視、公庁等への届出業務等を行っています。
郡山工場で製造している「過酸化水素、過酸化水素誘導品」、複写機に使用される「電荷制御剤、有機光導電体」、「アルミ着色染料」等の製造工程排水は、総合排水処理施設で処理し、郡山市を流れる阿武隈川水系の一級河川逢瀬川(おうせがわ)に放流しています。そのため、法定排水基準値よりも厳しい基準を設けて、監視・測定を行い、わずかな変化でも、直ぐに関係部署へ連絡、相談し、原因の究明と改善対策を検討、実施しています。
これからも工場一丸となって、逢瀬川のコイやヤゴたちが安心して棲めるよう、排水の品質維持・向上に取り組んでいきます。
筑波研究所
浅貝 昌史
古紙類の削減は、排出量の削減とともに、地域貢献のため、つくば市の社会福祉法人の障がい者支援施設に、回収とリサイクルをお願いしております。週に1度古紙類の回収にいらっしゃいますが、その時に少々会話をすると、皆さんいつもニコニコしており私も元気をもらっています。排出された古紙類を元にわずかではありますが、福祉活動に役立てられているとも感じております。
また、廃ガラスの削減は、今まで瓶をそのまま廃棄物置場へ持って行っており、スペース確保に悩まされていたのですが、納品業者の方と相談した結果、乾燥させることで返却しリユースすることが可能となりました。現在では廃棄スペース確保の悩みが解消されております。
環境・安全・品質保証部(現 環境安全部)
柴田 悟
ISO内部監査員として気をつけているのは、「当社製品などが環境に与える影響を評価するための書類が適切に作成されているか」、「開発の過程で原料調達・製造から廃棄・リサイクルに至るライフサイクルの視点で取り組まれているか」といったことです。そして実際に監査してみると、課題への具体的な取り組みの進み具合がきちんと書面で管理されていることや、教育計画も真剣に考えられていることが分かります。
環境保全には継続的な取り組みが必要です。製品の消費電力を抑制する素材を供給したり、生態系に配慮した除草剤・防虫剤を開発するなど、当社は化学会社として、これからも継続的に環境保全に貢献していけると思います。